夏休みが終わって、授業初日。大学の3階のやたら大きな窓から、他人事のようにぼんやりと止む気配のない雨を眺めている。
傘は持っていない。この後仕事だから、そろそろ出発しなければならないのだが。生憎、この大雨に生身で打たれる勇気も持ち合わせていない。
傘を持たず構内を走り抜ける白tシャツ一枚の男が目に入る。なんて潔いのだろうか。対して俺といえば、レンズをはずした伊達メガネに、カラフルな帽子。そのくせ、あろうことか留年が決定している。
彼はきっと順調に卒業への道を歩んでいることだろう。なんとなく、そう思った。
俺は弱い。
そう思うことが、最近増えた。弱い、というと
いささか曖昧か。
普通のことが普通にできなかったり、やたらと人に気を遣うくせに肝心なところで気を遣えなかったり。一丁前に孤独を恐れたり。そういう弱さ。
あるいは、選択を誤ったり、取り返しのつかない失敗をしたり、大切なものや、人からの信頼を失ったり。その度に、煮えたぎるような後悔の念に苛まれて。
そういうことを繰り返してしまう弱さ。
後悔は一回だから、意味があるのに。
人間としての核の部分に、問題がある!
真人間に、なりたい。
ここまで赤裸々に書き殴って気付く。これをポジティブな方向に帰着させるの難しすぎるな。
とりあえず、それらは自分のこれから治すべき欠点、取り組むべき課題として、決して正当化せずに心に留めておくとして。
そもそも、この世に自分の嫌いな部分が一切無い人間なんているのだろうか。いたとしても、かなりのレアケースだ。
自己嫌悪を正当化するつもりは毛頭ないが、人間らしいといえば人間らしい。
自己嫌悪は、人間の永遠のテーマだ!
そしてその自己嫌悪との闘いこそ即ち人が生きるということなんですかね。日々勝ったり、負けたり、ですね。
でも、その闘いにおいて、自分には誇らしい最強の武器がある。楽器と、それを少しでも評価してくれる皆様。いつも本当に、ありがとうございます。
まだ未熟ながら、紆余曲折経て、少しずつ築いてきたもの。
嫌悪、焦燥、卑下、落胆、懺悔、常時大雨みたいな世知辛い世の中から我が身を守ってくれる、傘。
でもきっと、それはそんな丈夫なものじゃない。
自分の過ちかもしれない、または逆らいようのない不条理、不可抗力かもしれない、様々な要因で、ある日いとも容易く吹き飛んだりするんだ。
大切に、大切に握りしめないと。
ふと自分の手の平に目をやる。相変わらず、生命線が異常に短い。ていうか、そもそも手が小さすぎる。なんだこれ。おもちゃ?
長生きはしたいと思わない。いや、ちょっとカッコつけた。できることならしたい。でもそれより、生きている限り、少しでも誰かの生きる意味でありたい。こんな人間だけど、この仕事のこと、心底誇りに思うんです。
そしていつか、中身丸ごと自分を誇れる人間になりたい!今はまだ全然ダメだ、頑張ろう。
雨に打たれて、歩いてみた。わざとらしく、ゆっくり。
おかしな爽快さがあった。